耐震等級3相当の住宅|費用・メリット・注意点をわかりやすく解説

こんちには!木の彩スタッフおおしまです。
今回は「耐震等級3相当」のお話しです。
新築を検討していて、インターネットで調べていると一度は目にしたことがあるかと思います。
地震が多い日本では、安全な住まい選びが家族の将来を左右します。しかし専門サイトで見かける「耐震等級3相当」という言葉は、意味も手続きもわかりづらいですよね。
本記事では新築を検討している方に向け、専門用語をかみ砕きながら、コストと安心を両立させるポイントを順番に解説します。
最後まで読んでいただけると「相当」の裏側がスッと腹落ちし、ご自身に合った耐震レベルを選べるようになりますよ!
耐震等級とは何か

まずは「等級」そのものをみていきましょう。
耐震等級は1・2・3の三段階で、数字が大きいほど建物にかけてよい最大荷重が増えます。言い換えると、等級1を基準に壁量・金物・基礎寸法などを強化し、等級2は+25%、等級3は+50%の余裕を持たせる仕組みです。
「相当」と付く場合は後述の審査を省きつつ、設計上は等級3と同じ強度を目指す住宅を指します。
等級ごとの基準早わかり
国土交通省の住宅性能表示制度では、等級1は建築基準法どおり「極めてまれに発生する地震力」に倒壊しない強度と定義され、その想定地震力を1.0として扱います[1]。
等級2は1.25倍、等級3は1.5倍まで耐えられる計算です[1]。
この係数は壁量だけでなく基礎配筋や接合金物の数までも増やすため、部材コストと工期が段階的に上がる点は押さえておいてくださいね。
[1] 国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド」
等級ごとの震災データ
数字が示す差は、過去の大地震でも裏付けられています。1995 年の阪神・淡路大震災では全壊家屋が104,906 棟に達しました[1]。
専門調査によると一階倒壊の91%、全壊建物の93%が旧耐震基準(1981 年以前)だった一方、新基準後の全壊は6.3%にとどまっています[2] 。等級3相当はこの新基準をさらに50%上乗せした強度を狙うため、直下型地震でも生活継続性を高められる点が特徴です。
つまり「等級3相当」は費用は掛かっても、震後に住み続けられる確率を上げる一種の保険とも言えます。
[1] 神戸市「阪神・淡路大震災 (詳細)」
[2] 不動産会社のミカタ「兵庫県南部地震が「新耐震基準」の常識を変えた」
等級3と相当の違い
カタログに並ぶ「耐震等級3」と「耐震等級3相当」は、どちらも“強い家”をうたっています。けれど前者は第三者機関の厳格な図面チェックを通過済み、後者は工務店が「等級3相当の設計です」と自己判定しているだけです。
この審査プロセスの有無が、費用・工期・保険優遇まで変えてしまう点を先に押さえておきましょう。
設計審査の有無とは
正式な耐震等級3を取得するには、登録住宅性能評価機関へ設計図書と構造計算書を提出し、壁量バランスや接合部の強度まで細かくチェックを受けます。
審査をパスした証として「設計住宅性能評価書」が発行されるため、図面ミスや計算漏れを事前に是正できる安心感があります。一方で「等級3相当」は審査自体を省き、強度計算も社内で完結するのが一般的。
公的な裏付けがないぶん透明性は低く、「実際の現場監理が甘くなっても気づきにくい」というリスクが残ります[1] 。
[1] 住まいの安心研究所「耐震等級とは?1・2・3の違いと耐震性を高めるためのポイント」
証明書取得フローとコスト
評価機関への申請は、
1 書類提出→ 2 質疑応答→ 3 交付という3段階。
図面が整っていれば交付までおよそ2週間が目安です[2] 。
手数料は戸建てで10〜40万円程度が相場で、構造計算費用が別に掛かるケースもあります[3]。相当品ならこれらの費用は基本不要なので、初期コストを抑えやすくなります。
[2] スーモ「建設住宅性能評価書とは?どんなことを評価するの?メリットや費用も解説」
[3] タイテル「耐震等級 3 にするために必要な費用を分析!お金をかけるメリットは?」
住宅ローン・地震保険への影響
耐震等級3の証明書を保険会社へ提出すると、地震保険料は最大50%割引が適用されます[4]。
フラット35Sの金利優遇や金融機関の評価アップも望めるため、長期的にみると証明書の有無が家計に与える影響は小さくありません。相当品は割引対象外となるので、取得費用を払っても10年ほどで元が取れるケースが多い点は覚えておくとよいですね!
[4] norq.co.jpsompo-japan.co.jp
ポイント
- 等級3=第三者審査+証明書発行+保険・金利優遇
- 相当=自己判定のみ。初期費用減だが長期メリットは限定的
「短期コスト」か「長期メリット」か——。家族の安全と家計を天秤に掛けつつ、証明書の価値も含めて比較検討することが失敗しない選択への近道です。
等級3相当の利点
「強い家」をリーズナブルに――これが“等級3相当”を選ぶ最大の魅力です。
正式等級3と同じ1.5倍の耐力を目指しながら、審査手続きを省くことで費用と時間をカット。家計へのインパクトを抑えつつ、家族の安心感を底上げできるとあって、近年は大手ハウスメーカーでも採用例が増えています。
ここではコスト・スケジュール・ローン控除の3つの側面から、その“おトクポイント”を見ていきましょう。
コストと工期を比較
第三者審査を受ける正式等級3では、構造計算費20〜40万円+申請手数料10〜40万円が相場です[1] 。相当品はこの申請手数料を丸ごと省けるため、最大40万円のダウンが期待できます。
時間面でもメリットは結構あります。評価機関による図面チェックは、質疑応答がスムーズでも戸建てで約2週間要します[2] 。
審査レスなら設計確定→着工を即座に進められるので、繁忙期をまたいで諸経費が膨らむリスクも抑えられます。
加えて、社内判定であれば図面再検討の裁量が広く、開口部の大きいプランや吹き抜けなどデザイン重視の要望にも応えやすい点が現場から好評です。
[1] タイテル「耐震等級 3 にするために必要な費用を分析!お金をかけるメリットは?」
[2] ㈱国際検査センター「住宅性能評価業務の流れ」
住宅ローン控除への影響
2024〜2025年入居の新築では、省エネ基準適合がローン控除の必須条件となり、耐震等級は直接の要件に含まれません[3] 。
つまり等級3相当でも控除そのものは利用可能で、審査待ちによる入居遅延リスクが減る分、申請手続きを計画どおり進めやすいのがメリットです。
一部金融機関では、等級3相当+社内構造計算書で融資審査を通すケースも増えています。証明書がなくても標準金利で借入できる可能性があるため、「まずは頭金を抑えて早く入居したい」という層には相当品がフィットします。
[3] 国土交通省「住宅ローン減税」
ポイント
- 費用圧縮:申請料カットで最大40万円節約
- 時間短縮:設計〜着工で約2週間前倒し
- 資金計画が立てやすい:ローン控除は通常枠で利用可
短期コストとスピードを優先するなら、等級3相当は十分に検討に値します。次章では、メリットの裏に潜む注意点を整理します。
等級3相当の注意点

申請レスでコスパに優れる等級3相当ですが、「図面通りに造れば強い家になる」という前提は“裏付けなし”です。第三者の目が入らないぶん設計図の精度や現場監理の徹底は、施主自身が見抜く覚悟が欠かせません。
さらに忘れがちな地盤条件も、強度を左右する大きなポイント。ここでは“設計書類”と“土地の素性”の二つに分けて、見落とすと後悔しかねない落とし穴を整理します。
設計図と構造計算書
耐震等級3 相当では、構造計算書や壁量計算を社内チェックだけで確定させるケースが一般的です。第三者機関が関与しないため、入力ミスや仕様抜けがそのまま着工まで進む危険性があります。
実際、建築士向け検査会社が2023 年に行った木造構造計算書の抜き取りチェックでは、再指摘となった割合が半数近くに達したと報告されています[1] 。
また、自由度が高い反面、プランを優先して耐力壁を減らすと“計算上はOKでも現場での釘ピッチや接合金物不足で強度が出ない”事例も散見されます[2] 。
[1] 有限会社カノム「構造計算ミス多発」
[2] make note「【2024年版】耐震等級3とは?大地震に強い家で快適な住まいを手に入れよう」
対策のポイント
- 図面一式の外部レビュー:構造設計事務所や住宅検査会社へスポット依頼すれば、5万〜10 万円程度で第三者チェックが可能。
- 現場監理の可視化:金物取り付け前後の写真を必ず共有してもらい、図面と照合。
- 完成後の性能保証:設計図・計算書の控えを保存し、将来のリフォームや売却時に備える。
地盤・地域条件
どれほど強い構造でも、軟弱地盤では本来の耐震性を発揮できません。住宅地盤調査実績200 万棟超の「地盤サポートマップ」によると、都市近郊の埋立地や旧河川流域では液状化リスクが高いエリアが顕在化しています[3] 。
さらに2025 年の同サービス改訂で、ハザードマップポータルと連動した浸水・土砂災害レイヤーが追加され、土地固有の脆弱性が一目で確認できるようになりました[4] 。
地盤に懸念がある場合は、表層改良でも50〜120万円ほどの追加費が発生し、結果的に“相当”で節約したコストを上回ることもあります。地盤保証を付帯しないと、不同沈下による修復費用(500万〜)が全額自己負担になる点にも注意が必要です。
[3] 地盤サポートマップ
[4] 新建ハウジング「JHS「地盤サポートマップ」が国交省「ハザードマップポータルサイト」と連動」
対策のポイント
- スウェーデン式サウンディング試験(SWS)を実施し、N値3 未満が連続する層がないか確認する。
- 保証上限2,000 万円程度の地盤保証をセットにし、不同沈下時の費用リスクを限定する。
- ハザードマップと併せて、最寄りの活断層帯や津波浸水想定区域もチェック。
ポイント
- 設計書類は外部チェックと現場監理写真で“目利き”を補強。
- 地盤調査と保証をセットにして、構造強度が発揮できる土台を確保。
- 追加コストを加味しても、長期リスクを下げる方が結局は安くつく。
失敗しない選び方

「強い家」を建てる最後のカギは、誰に任せるかとどこでチェックするかの2点です。年間棟数が多い大手でも不具合はゼロではなく、第三者の目が入らなければ設計意図どおりの強度は担保されません。
ここでは〈施工会社の実績確認〉と〈第三者機関の活用〉という2本柱で、“等級3相当” を安心に近づける具体策を整理します。
施工会社の実績確認
- 年間棟数は目安になる
2024年時点の着工棟数ランキングでは、飯田グループ約4万棟、一条工務店約1.2万棟、積水ハウス約1万棟が上位を占めています[1]。
数が多い=品質保証ではないものの、社内マニュアルや検査体制が整い、部材ロットのブレが少ないメリットは見逃せません。 - 不具合率を開示しているか
第三者インスペクターの最新集計では、2024年の注文住宅265件の現場で全検査項目の不具合指摘率50%超、うち構造部60%超という結果が出ています[2]。
施工会社側が社内検査結果や是正履歴を積極的に開示しているかが、信頼度を測るリトマス紙になります。 - 担当者の継続フォロー
着工後に担当が変わると設計意図が伝言ゲーム化しがち。契約時点で「申請図作成〜引き渡し後1年点検まで同じチームが対応できるか」を確認しましょう。
チェックリスト
- 10年以上・100棟以上の施工実績はあるか
- 社内検査写真を施主へ共有してくれるか
- 構造計算書の電子データを納品してくれるか
第三者機関の活用
- ホームインスペクションで“Wチェック”
新築一戸建てでも約8割で不具合が見つかったという調査結果が公開されています[3]。ホームインスペクション費用は5〜12万円が相場で、設計審査料を省いた「相当」で浮いたコストの一部を充当できます[4]。 - 検査タイミングは3回がおすすめ
- 基礎配筋完了時(鉄筋径・ピッチを確認)
- 上棟直後(耐力壁と金物を確認)
- 完了前(雨漏り・断熱欠損を確認)
3回セットでも総額20万円前後に収まるケースが多く、後からの是正工事よりはるかに安上がりです。
- 書類だけでなく写真保存
インスペクターから受け取るレポートは、写真と図面対応表まで揃えてクラウドに保管しておくと、増改築や売却時のエビデンスとして有効に機能します。
ホームインスペクションは、住宅の劣化や欠陥を第三者の建築士が診断し、修繕費や安全性を事前に把握できるサービス。中古購入や売却時に活用。
ポイント
- 実績+情報開示がある会社を選ぶ
- 第三者検査3回セットで「設計通り」を担保
- コストは浮いた審査料でほぼ相殺可能
[1] おうちのこと相談室 「【2024年最新版】ハウスメーカー棟数ランキング&選び方のコツを解説」
[2] PRTIMES「最新データで判明!新築工事中の施工不良、全検査項目で50%超え」
[3] 株式会社さくら事務所「新築一戸建ての第三者機関検査は必要?費用やよくある悩みを住宅診断のプロが解説!」
[4] 株式会社さくら事務所「新築一戸建ての第三者機関検査は必要?費用やよくある悩みを住宅診断のプロが解説!」
まとめ:耐震等級3相当で後悔しない家づくり
耐震等級3相当は、第三者機関の審査を省きながら、設計上は等級3と同等の強度を狙える“コスパ型”の選択肢です。工期や初期費用を抑えつつ、家族を守る安心感を得られるため、限られた予算でも「強い家」を諦めたくない人に向いています。
とはいえ、審査レスの裏側には「図面ミスがそのまま現場へ流れる」「地盤条件との相性を自力で見極める」などのリスクが隠れています。外部インスペクションを挟んだWチェックと、地盤調査・保証をワンセットにすることで、長期的な安全性と資産価値をぐっと高めることが可能です。
施工会社の実績と情報開示、そして第三者検査3回セット──この2本柱さえ押さえれば、等級3相当でも正式等級3に匹敵する安心を手に入れられます。
コストと安全を両立し、「震度6強でも住み続けられる家」という未来を、今日から具体的に描き始めてくださいね!