百年の家に、手を入れる。宝達志水町の古民家リノベーション(2)樹齢80年のもみじを、切ります 

前回に続いて、宝達志水町ではじまった古民家リノベーションの記録です。今回は工事そのものというより、庭に立っている一本のもみじの話を書かせてください。近いうちに、この木を切ることになりました。

縁側の正面に、大きなもみじが立っています

東向きの縁側の真正面、飛び石をたどった先に、太いもみじが一本あります。幹には苔がのっていて、根元からいくつにも枝分かれして、大屋根の上まで伸びています。

お施主様に伺うと、この住まいが建って少ししてから植えられたもので、樹齢はおよそ85年。夏は写真のとおり、縁側の前に緑の天井をつくってくれます。秋になれば真っ赤になって、その葉が縁側に散る。ずっとこの住まいと一緒にあった木です。

それでも、切ることにしました

最初の打ち合わせでは、私たちも「残す方向で考えましょう」と話していました。枝を落として樹形を小さくして、共存できないかと。

ただ、図面を描いて現場を何度も見るうちに、難しいという結論になりました。

ひとつは屋根です。枝が大屋根にかぶさっていて、瓦の谷や樋に落ち葉が溜まり続けています。

ふたつめは光です。東の縁側をすっかり覆っているので、朝の光が入ってきません。昼間でも室内はずいぶん薄暗いままです。北陸は冬に日が差す時間そのものが少ないので、入るはずの光は一日でも多く入れておきたい。朝の光が差し込む縁側は、直したあとのこの住まいで、いちばん気持ちのいい場所になるはずです。

みっつめは根と、これからの管理です。根は縁側の基礎の下や、新しく引き直す排水の経路にかかってきます。それに、この先ずっと剪定と落ち葉の掃除を続けていくのは、お施主様にとってもなかなかの負担になります。

枝だけ落としても根の問題は残る。根を切れば木が弱って、いずれ倒れる危険が出る。両方に効く手が見つからず、最終的にお施主様と相談して、伐ると決めました。

木を切る判断は、何度やっても気が重いです。木を扱う仕事をしているから、なおさらだと思います。

切る前に、しておきたいこと

まずは写真を撮っておくつもりです。今の緑の姿と、幹の太さが分かる一枚。

倒す方向には縁側と隣家があるので、一気に倒すことはできません。上から順に枝を落として、幹を短く切り分けながら下ろしていく段取りになります。

薪にします

伐った幹と枝は、処分場に持っていかずに、薪にします。

もみじ(カエデ)は薪としては上等な部類です。硬くて重い木なので、同じ体積でも長く燃えて、火力も落ちにくい。煙も少なめです。

ただ、切ってすぐには焚けません。玉切りにして、割って、風の通る場所に積んで、一冬か二冬は乾かします。生木のまま焚くと、燃えないうえに煙突を汚します。だから今回の薪が実際に使えるようになるのは、この工事が終わって、お引き渡しもずいぶん過ぎたころです。

急ぐ話ではないので、それでいいと思っています。80年かけて育った木が、あと二年待って、冬の暖かさとして戻ってくる。もみじは太い枝が多いので、割るのは骨が折れそうですが。

古い住まいを直す仕事は、残すものと手放すものを決めていくことの連続です。全部は残せません。ただ、手放すと決めたものにも、別のかたちで居場所をつくることはできる。今回のもみじは、そういう仕事にしたいと思っています。


宝達志水町の古民家リノベーションは、株式会社木の彩が設計から施工まで一貫して担当しています。古い住まいをどうするか迷っておられる方は、写真を撮っておいていただければ、それだけでもご相談に乗れます。

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