半年経った家を見にいってきました ― 輪島市O様邸 半年点検
2026年7月22日。雲ひとつない晴れで、車を降りた瞬間から「今日は暑いぞ」という日でした。この日は輪島市のO様邸へ、お引き渡しから半年の点検にうかがってきました。
震災でお住まいを失われたあと、同じ土地に建て直した平屋です。着工から引き渡しまで、私たちも何度この道を通ったかわかりません。
半年ぶりに敷地に入って、最初に出た言葉は「えっ」でした。家ではなく、庭を見てです。
外構が完成する前はこうでした。

それが、半年でこうなっていました。

人工芝が敷かれ、レンガで縁取った花壇ができて、砕石まで入っている。芝と砕石の境目には御影石のピンコロがきれいに一列。
全部、O様がご自身で仕上げられたそうです。
正直、外構屋が入ったのかと思いました。ラインの通し方も、素材の切り替え方も、こちらが提案してもこうはならなかったかもしれません。植栽もすっかり根づいていました。
そもそも半年点検って、何を見ているのか
半年点検は、不具合を探しに行く場、というより「木と建物が落ち着いたかどうか」を見に行く場です。
無垢材を使った家は、最初の一年で木が動きます。動くことを前提に建ててはいるものの、実際にどう動いたかは行ってみないとわかりません。だから見に行きます。
この日確認したのは、こんなところです。
- 建具の建て付け(引戸や開き戸の当たり、開け閉めの重さ)
- 床・壁・天井の無垢材の縮み、隙間や反り
- 造作まわりのビス浮き、コーキングの状態
- サッシまわりの結露跡、水まわりの漏れや詰まり
- 換気設備や給湯機器の動き
- 外部の板金、土間コンクリートのひび、外構の沈み
手を入れたのは、二か所
今回の指摘は二つ。どちらもその場で対応させていただきました。
ウォークインクローゼットの床の欠け
一つめは、ウォークインクローゼットの杉フローリングにできた小さな欠けです。
杉はやわらかい木です。踏んだときの感触が気持ちよくて、冬でも足の裏が冷たくならない。その心地よさの裏返しで、硬いものを落とせば傷も欠けもできます。無垢の杉を選ぶというのは、この性質ごと引き受けるということでもあります。
ただ、やわらかい木は補修がきくんです。傷を完全に消すことはできなくても、目立たなくすることはできる。住みながら少しずつ手を入れていけます。傷が増えていくことを劣化と呼ばずに、住んだ年月として受け取れる。杉はそういう素材だと思っています。
窓枠の表面のざらつき
二つめは、無垢材でつくった窓枠です。手で触ると、表面が少しざらついていました。
これは傷ではありません。無垢材は湿気を吸ったり吐いたりするので、その動きにつれて木の繊維が起き上がってくることがあります。いわゆる毛羽立ちです。とくに一年目は出やすい。木が生きている証拠、と言ってしまえばそれまでですが、毎日手が触れる場所なので、ざらつきは気になります。

なので、その場でサンドペーパーをかけて表面をならし、塗装をし直しました。手触りが元に戻ります。
この作業、半年点検でやることに意味があります。毛羽立ったまま何年も使うと、そこから汚れが入って黒ずんでいきます。逆に、出はじめのタイミングで一度ならしてしまえば、その後は落ち着いて毛羽立ちにくくなる。ちょうど今が、そのタイミングでした。
無垢材は「手のかかる素材」と言われます。実際そのとおりです。ただ、かかる手のほとんどは、こういう十分程度で終わる作業だったりします。
建具の狂いも床鳴りも、目立つ縮みもなし。半年経って手を入れたのがこの二か所だけというのは、正直ほっとしました。
ついでに、表札も付けてきました
この日はもうひとつ。O様がご自身で選ばれた表札を、玄関ポーチの壁に取り付けてきました。施主支給のものです。
こういう作業は、点検で行ったついでにサービスでやらせてもらっています。わざわざ業者を呼ぶほどの仕事ではないけれど、いざ自分でやろうとすると下地がどこにあるかわからないし、まっすぐ付くかも不安。そういうたぐいの仕事です。
壁の中のどこに何が入っているかは、建てた私たちがいちばんよく知っています。だったら、ついでに済ませてしまうのが早い。
表札が付くと、建物が「その家」になります。半年前に完成していた建物が、この日ようやく最後の一枚をまとった気がしました。
「真夏でもエアコン一台で足りてる」
点検のあいだ、O様が話してくださったことがあります。この暑さでもエアコンは一台しか使っていない、それで家じゅう涼しい、と。
平屋で間仕切りを少なくした設計と、断熱・気密の性能が噛み合うと、こういう住まい方ができます。図面の上では想定していたことです。でも、実際に住んでいる方の口から聞くと、まったく意味が違って聞こえます。
そしてもうひとつ、「安心して住める」という言葉をいただきました。
震災を経験されたお住まいです。その方が、暑さの話と同じ調子でこの言葉を口にされた。そのことを、私たちは重く受け止めています。
地震に強い家をつくるのは当たり前のことです。でも本当に目指したいのは、その当たり前を、住んでいる方が日々の暮らしの中で意識しなくて済む状態のほうなんだと思います。

引き渡しは区切りじゃない
木の彩では、お引き渡しのあと、半年・一年、そしてその先も定期的に点検にうかがっています。
家は完成したときがいちばん良い状態、ではありません。木が落ち着いて、暮らしの動線が住み手のからだに馴染んでいく。その過程で出てくる小さなずれを、こちらから見に行って直す。それを続けないと、長く保つ家にはならないと思っています。
それに今回の庭のように、引き渡したあとの続きを住み手のほうが作っていくこともあります。私たちが渡すのは、あくまで途中までです。半年後、一年後にその先を見せてもらえるのは、こちらにとってもかなり楽しみな時間です。
次は一年点検でうかがいます。そのころ庭がどうなっているか、今から気になっています。
O様、暑いなかありがとうございました。
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