石川県で木の住まいづくり

【住み始めて1年後】海辺の街で叶えた、夫婦二人のしっくり馴染む平屋暮らし

石川県の静かな海辺の街。かつてログハウスが建っていたその場所に、新しく一軒の平屋が完成しました。お施主様は、50年という歳月を共に歩んでこられたM様ご夫婦。

都会からこの地へ移り住み、第二の人生の舞台として選んだのは、華美な装飾を削ぎ落とした「究極にシンプルな家」でした。

住み始めて一年。ご夫婦の言葉から見えてきたのは、工務店との信頼関係と、計算された「動線」がもたらす心のゆとりでした。

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ログハウスから「終の棲家」へ。きっかけは未来への備え

もともとこの場所には、ご主人のこだわりが詰まったログハウスがありました。しかし、年齢を重ねるにつれ、暮らしに少しずつ「無理」が生じ始めていたといいます。

「2階建てだと、もし車椅子が必要になったときに上がれなくなる。それにログハウスは冬がとにかく寒くて……」と奥様は振り返ります。

隙間風を防ぐために窓をトリプルガラスに替えるなど工夫もしましたが、根本的な解決には至りませんでした。さらに、薪ストーブの燃料調達も、年を追うごとに負担を感じるようになっていたそうです。

「老後を安心して、介護が必要になっても住みやすい家にしよう。それなら賛成するよ」

そんな奥様の明確な条件のもと、M様ご夫妻の平屋づくりがスタートしました。目標は、お互いを介護しやすく、無駄な動きを必要としない、シンプルで機能的な住まい。15年、20年先を見据えた、人生の再設計でした。

「心地よい距離感」が決め手となった工務店選び

家づくりを検討する中で、大手のハウスメーカーから地元の材木店まで、いくつものモデルハウスを巡ったというM様。しかし、豪華な装飾や複雑な間取りは、お二人が求める「シンプルで暮らしやすい家」とは少し違っていました。

「モデルハウスは素敵だけれど、現実味がない。私たちは、服選びと同じで、自分たちに本当に似合う、等位の家が欲しかったんです」

そんなM様が出会ったのが、地元の工務店「木の彩」でした。

「他の会社さんは資料が立派すぎて、私には少し“重く”感じてしまったんです。でも桜井さんは、ほどよい距離感が心地よかった。押し付けることなく、私たちの要望をシンプルに受け止めてくれる。その誠実な姿勢に惹かれました」

また、工務店選びではご夫婦で意見が分かれた場面もあったといいます。 「主人はベテランの方に安心感を抱いていましたが、私は『若い人には若い人の新しい発想があるはず』と直感したんです。

最後は、桜井さんのお父様の代から続く技術への信頼もあって、主人が『君が決めていいよ』と言ってくれました」

「見えない快適さ」を形にする難しさとよろこび

打ち合わせでは、色や素材選びに頭を悩ませることもありました。 「見本だけでは、全体の雰囲気がなかなか想像できなくて。工事を止めるわけにはいかないから、最後は『これでお願いします!』と決めるしかありませんでした」と奥様は笑います。

時には、お風呂の床の感触が想像と違ったり、後から「こうすればよかった」と思う設備に気づいたりすることも。しかし、それも含めて「自分たちの家を育てる過程」として受け入れていく寛容さが、インタビューの端々から感じられました。

「トイレの色を少し渋めにしてみたら、真っ白よりも落ち着く空間になった。こういう小さな発見が、住み始めてからの楽しみに繋がっています」

毎日3,000歩。家事そのものが「健康な運動」になる動線

実際に住み始めて驚いたのは、その「動きやすさ」でした。 奥様がスマートフォンの歩数計を確認すると、家の中の用事だけで、1日3,000歩ほど歩いていることが分かったそうです。

「動線がとてもスムーズなので、それだけ歩いても全く疲れないんです。段差がないから、掃除も楽ですし、自分の部屋に行くのもストレスがありません。家の中で動いているだけで、ちょうどいい運動になっているんですよ」

行き止まりのない回遊性のある間取りは、遊びに来たお孫さんたちにも大好評。「かくれんぼ」ができるほど自由度の高い空間は、家族が集まる場所としての温かさも湛えています。

また、当初予定していた薪ストーブのスペースをパントリーに変更したことも、生活の知恵でした。造り付けの棚を充実させたことで、余計な家具を置く必要がなくなり、部屋はいつもスッキリと整っています。

都会では味わえない、贅沢な「静寂」と「光」

「一番の贅沢は、音がしないことかもしれません」と奥様は語ります。 以前の悩みだった近隣の音対策として導入したトリプルガラスは、結果として、家の中に極上の静寂をもたらしました。

ご主人がリビングでYouTubeを楽しんでいても、隣の部屋の奥様にはほとんど音が伝わらない。お互いの時間を尊重できる距離感が、この家にはあります。

そして、この家での最高のひとときは、夕方の晩酌と、朝のコーヒー。 「主人が豆を挽いてくれるコーヒーを、この手作りテーブルで飲む。その後、二人で海まで散歩に行くのが日課です」

晴れた日の夜には、庭の人工芝に寝転んで星を眺めることもあるのだとか。

「隣の方に『流れ星が見えるよ』と教えてもらって。芝生に寝転ぶと、まるで宇宙にいるような気分になるんです。主人が『本当だね』なんて言ったりして。そんな些細な時間が、とても幸せですね」

これから家を建てる方へ:「疑問を作る努力」と「夜の想像力」を

一年間の暮らしを振り返り、奥様はこれから家を建てる方へ、実感を込めたアドバイスをくれました。

「『分からないこと』が分からない。最初はそうだと思います。でも、だからこそ疑問を作る努力をして、担当の方にどんどん質問してほしい。パーツだけ見るのではなく、それが実際に使われている写真や事例をたくさん見せてもらうことが、後悔しないコツだと思います」

また、駐車場の色選びなど、昼の印象だけでなく「夜の見え方」まで考慮することの大切さも、実体験として語ってくださいました。

「実は、駐車場の色を黒にしたのは少し後悔しているんです」と奥様は明かしてくれました。

「打ち合わせの時は『黒の方が引き締まって格好いいね』と主人と話して決めたのですが、実際に住んでみると、この辺りは夜になると真っ暗。黒い床面は光を吸収してしまい、駐車するときに境界が本当に見えづらいんです。おしゃれさだけでなく、地域の明るさを踏まえて選ぶことが大切だと痛感しました」

後から人感センサーライトを設置して対策はしたものの、これから建てる方には「昼の印象だけで決めず、夜の見え方も想像してほしい」と強く伝えたいポイントだそうです。

「いい感じ」という、最高の愛着

「この家への愛着を言葉にするなら?」という問いに、奥様は少し考えてから、こう答えてくれました。

「『入ったときから、いい感じ』。それが一番しっくりきます」

新築なのに、ずっと前からそこに住んでいたような、自分たちの生活にすっかり馴染んでいる感覚。それは、華美な主張をせず、住む人の動きや習慣に寄り添うように設計された家だからこそ得られる、究極の心地よさなのかもしれません。

「もうすぐ、庭でトマトを育てるのが楽しみなんです。石を取り除く作業は大変ですけど、それもまた、この家での新しい楽しみですから」

海風が通り抜ける平屋には、これからもM様ご夫婦の、穏やかで「いい感じ」な時間が積み重なっていくことでしょう。